求められている範囲で最大限を【現代の職人の生き方】
何を求められているのか
エンターテイメントに携わる者として常に頭に置いているのは「何が求められているか」です。
この業界の諸先輩方の事は心から尊敬していますし、先輩達のおかげでこの業界は今も存在しているのだと思います。
ただ、その尊敬すべき先輩方の中には、残念ながら過去の日のまま止まった方も多くいらっしゃるのも事実です。
僕らはそんな風に価値や感覚のアップデートを止める事はできません。
今回はそんなお話を。
時代とともに変わるエンターテイメントの在り方
今から30年程前は、バブルの恩恵を受けて民衆の財布の紐も緩かったので「お金を出してでも良いものを買う」というブランド志向が流行りました。
そこから月日は流れて、現在はどうでしょう。
バブルの頃には産まれてもいない世代が社会の主戦力となり、消費税は存在すらしなかったのに今度は10%になるそうです。
年金は払うだけ払って自分は貰えないかも。
大企業に勤めているわけでもないから景気の上向きなんて実感できない。
今はそんな時代です。
そして人々の消費行動はどうでしょうか。
少なくとも30年前に比べると、費用対効果のバランスを考えるようになりました。
もっと言えば、少しばかり効果を下げてでも費用も下げたいと思う人が大半を占めます。
エンタメ業界も同じです。
ダンスイベントを主催するダンス教室は、「予算の都合」でリノリウムを削ります。
「予算の都合」で照明の灯体を削ります。
マイクは1人1本ではなく「予算の都合」で使いまわします。
多少見た目が不細工でも構いません。
こういう状況です。
もちろんこれが良い悪いの話をしたいわけではありません。
そりゃ主催者の都合もありますからね。
だからこそ、僕らの仕事は常に“求められているもの”に寄り添うべきなのです。
技術屋の独りよがりにならないように
驚くべきことですが、未だにいます。
「俺らの若い頃はな」を枕言葉に喋り出す人。
たしかにそういう方々の若い頃はお金をかけてでも素晴らしいステージになるならOKという価値観の時代でした。
ただ、それを今の時代に押し付けられても、主催者も無い袖は振れませんから。
更に酷くなると裏で愚痴りだすという…
こうなると一緒に仕事もしたくなくなりますね。
何が言いたいかというと、主催者が求めているレベルの範疇で最大限を提供すること。
これが今の時代の僕らに求められることなのではないでしょうか。
「絶対あった方がいい」と言って備品を用意して、事後に請求するなんて言語道断です。
こういった正義の押し付けをやめないかぎり、僕らの業界が認知されて、実感を伴って上向くことはないと思います。
僕らは職人でもありますが、サービスパーソンでもあります。
むしろお客さんは後者としての対応を求めていたりします。
蹴落とし合いではなく、全員で勝ちに行くために、僕はこの感覚の中で仕事をして行きます。